人生をドブに捨てるつもりですか?~ケアレスミスを言い訳にしない
不注意による間違い、軽率な間違いのことを「ケアレスミス」と言ったりします。
「ケアレスミスさえなかったら、もっとテストの点数は上がったのに」というタラレバは、しょっちゅう耳にします。
ケアレスミスを連発するタイプのお子さんをお持ちの親御さんは、どうしたらいいのか、悩まれていることと思います。
順番に、原因、対処法を、ひもときましょう。
目次
原因:言い訳マンに不都合な真実
ケアレスミスの本当の原因は何でしょう。
ケアレスミスは、文字通り「不注意」による間違いなので、理解していない「ハナっから答えられなかった」誤答に比べ、軽く捉えられがちです。
お子さんの中にも、「本当はもっと実力があるはずだ!」とミスの多い現実を直視しなかったり、「これから気をつければいい、次は大丈夫」とタカをくくったりする場合も多いです。
しかし断言しますが、そうやって現実から目を背けたり、対策を怠ったりする人は、決してミスをなくせません。
現象として「ケアレスミス」のカタチで現れていますが、実力不足が原因で起こるミス、要は能力不足です。
大事なことなので何度でも書きます。
ケアレスミスをするのは「言い訳マン」です。
ミスを減らせている人は、自分に合った「ミスの起こりにくい方法」を見つけ、愚直に実践しています。
「あれは単にケアレスミスだから」と言い訳することは、世間に対して「私は実力のないバカ者だ」と大声で吹聴しているようなもので、恥ずかしいことです。
ケアレスミスは人生における「大減点」
私の友人で、しょっちゅうケータイをどこかに置き忘れる人が居ます(ちなみに子供ではなく、いい歳の大人です)。
しまいにその人は、家の中でもケータイを失くし、そういう時はどうするかというと、PCを使って「自分のケータイに電話かけて欲しい」と私に頼むのです。
一度や二度なら笑って許せるものですが、そのうちに呆れてバカバカしくなってきます。
もう少し深刻なハナシをします。
あなたが会社や何かの組織において部下を指導する立場にあり、あなたの下にいつもケアレスミスする「うっかりくん」が居たとします。
あなたは、ダブルチェックなど手間ばかりかかる彼/彼女のことを、高く評価しますか?
ミスする方にもいろいろ言い分はあるかもしれませんが、それを評価する側から見ると、
「何を甘ったれたことを言っているんだ?」
「ケアレスミスであろうがミスはミス、出来ていないことは同じ」
となるのです。
うっかりミスを放置することは、友達を失くす程度のことから収入減という深刻な事態まで、人生のあらゆる場面で相手の信頼を得られず、途方もなく損をします。
もちろん、中学入試においても、評価側(学校側)から見れば同様です
(学校は、ケアレスミスの多い子を抱えておきたいと思いますか?
ケアレスミスの多い子=大学入試でも失敗する確率の高い子、なんですよ!)
そう。
ケアレスミスは、全く「割に合わない」ミスなのです。
対策
基本は、
ミスのパターンを把握 → 独自のルールを作る
という流れで、改善していきます。
ミスを認めないと始まらない
先ず、自分がうっかり八兵衛であることを認識するところから始めます。
私の教え子で、ものすごくミス(それもイージーなミス)の多いお子さんがいました。
「注意しましょう」の精神論では、実効性に乏しく再演防止にならないので、実践可能な方法に落とし込む必要がありました。
という訳で、親御さんの意見も汲んで、真面目に「ミスノート」を作ることにしました。
ミスを可視化する「ミスノート」のすすめ
ミスノートとは、その名の通り、ミスをしたらつけるノートです。
基本的には、見開きの左ページに間違った問題とそれをどう間違ったかを、右に正解を書きます。
- 途中で計算間違いしたなら、その経過を書いて解きなおす
- なぜか数字を写し間違えたなら、それを書いて、解きなおす
- 問題を読み違えたなら、読み違えた内容を書いて、解きなおす
- そもそも理解不十分だったなら、どこがわからないのかハッキリさせ、解きなおす
- そもそも時間が足りなかったなら、 その旨を書いて、解きなおす
単なる解き直しと違うのは、それを後で見返す前提で作る、ということです。
つまり、同じ間違いを繰り返さないために作る備忘録というか、ミスを可視化するツールなのです。
そしてこのノートは、「宝物」になります。それについては後述します。
ルールは、たった一つ。
問題を間違えた際、どんな些細で信じられないようなレベルの低いことがらも、絶対に記入しましょう。
記入する内容が恥ずかしいほど効果的なのです。
例えば(理科の例)、
- 小数第2位で四捨五入せよという問題を、小数第2位まで答えた
- 実験2を問われているのに、実験1の表を参照した
- 化学の比例計算の際の掛け算の、分子と分母をさかさまにした
- 必要な熱量の計算で、分子と分母をさかさまにした
- 比重(g/cm3)を求めるのに、分子と分母をさかさまにした
- ドップラー効果のサイレンの音の正解(副詞「高く聞こえる/低く聞こえる」)を、形容詞(高い/低い)で答えた
- 力のモーメントの足し算と引き算を間違えた
- 水の相転移問題で、「水蒸気/水」を「水/氷」と読み違えた
- 水溶液の重さで計算すべきところを、水の重さで計算した
- 「どちらの方角に見えるか8方位で答えよ(正解「南西」)」という月の満ち欠け問題で、月の位置(「B」)を答えた
- 氷の融解で「融け残った水の量」を問われているのに、「融けた水の量」を答えた
- マグネシウム:酸素の比を求めるトコロ、酸化マグネシウム:酸素の比を答えた
- 生成した一酸化炭素量を答えるべきトコロ、反応に使われた炭素量を答えた
こういうレベルまで、つけていきました。
そう、これは、相当面倒くさい作業です。
場合によっては、ノートの量も膨大になるかも知れません。
でもこれこそが、自分の弱点に向き合い克服する最適の方法です。
またこのノートは、自分で作った自分だけの宝物、お守りになります。
そう、テストの前にみると落ち着くしミスも減って最高に役立つのです。
ミスノートを作り、時に見直し、自分の弱点に真正面から向き合うのは、なかなか大人でもできないことです。
同じようなミスを繰り返していると、それに直面するたび気分も凹みますし、時には嫌気も差すでしょう。
そういうことを、小学生がやろうというのですから、これは相当大人びた作業だということです。
これができないお子さんも、正直いると思います。
そういうお子さんは、そもそも「中学受験ができる程には精神的に成熟していない」ということです。
そうであれば、無理して受験しない方がいいかも知れません。
年齢(及び精神的成熟)とともにケアレスミスが改善されることもありますので、そういうお子さんの場合は、自己肯定感を大事にして「惜しかったね」ということで小学生時代を過ごす、というのもアリだと思います。
何故こんな厳しいハナシを書くかというと、自己認識ができたなら7割方解決したようなものだからです。
逆に言うと、ここを素通りして方法論だけ真似したところで、絶対モノにはなりません。
発生しやすいミスのタイプ別対策
自分のミスのパターンを把握したら、それに対しルールを作り、ミス再演防止策として実践するのみです。
ミスのパターンは人それぞれで、当然予防策も独自に考えなければならないのですが、ここでは典型的な3つの要因とその対策にいて、まとめます。
計算間違い
筆算がずれることで起こる計算間違いや、自分で書いた文字や数字を読み間違えることで起こるミスです。
先ず、算数の文章題などの場合は、式(こうしたら答えが出るハズだという論理の筋道)を書いてしまってから、計算をするようにします。
論理を組み立てる脳と計算を処理する脳では使う部位が違うので、一旦ロジックを組み立てることをやり切ってから計算に移る方が、効率的かつ間違いにくいからです。
その際、計算を書き込むスペースを、式を書いたスペースからハッキリ分けて確保することが大事です。
また、当たり前に言われていることですが、丁寧な字で大きくはっきり、さらに数字を並べて書くようにします。
慣れるまでは、罫線があるノートを使い、その線に沿って数字をていねいに書く練習をします。
慣れれば、真っ直ぐに筆算が書けるようになり、ずれることで起こる計算間違いが減少します。
また、
- できる限り大きい数字を取り扱わない(かけ算は割り算と一緒に約分しながら計算する、など)
- 3.14は最後に1回だけかける
などの「間違いにくい計算上の工夫」も、効果的です。
写し間違い
問題を計算用紙に書き写すとき、あるいは計算用紙から解答を用紙へ書き写すときに起こるミスです。
計算用紙に書いた計算式などがゴチャゴチャしていることが大きな原因です。
計算用紙のスペースを十分に取りながら、数字を大きくはっきり書きましょう。
途中の計算式だからとあちこちに書かず、問題の番号を書き添えながら後で見直しがしやすいような工夫をしましょう。
問題の読み間違い
記号で答える問題を言葉で書く、「当てはまらないもの」を選ぶ問題で「当てはまるもの」を書く、漢字で答える問題をひらがなで書く、「全て選ぶ」問題で「1つだけ」書くなど、問題文をよく読まないことで起こるミスです。
この「読み間違い」の対策としては「問題文をよく読むこと」に尽きるのですが、具体的には
・問題の重要部分に線を引いたりして、確認しながら読むクセをつける
・問題を少なくとも2回読むことを自分に課す
・頭の中だけで考ず、手を動かしながら問題を解くクセをつける
・ブツブツ音読する
などです。
この中で、「音読」について補足します。
目で見て脳が認識することに加え、言葉を発して(身体を動かして)、耳で聞いて、という多段階のプロセスで、脳がシッカリ問題の中身を把握しますので、非常に効果が大きい方法です。
テスト中に音読する訳にはいきませんが、他人に聞こえないぐらいのひそひそ声で音読することならできます。
また慣れてくると、声に出さずとも音読しているように頭の中に声が響いてくるようになります(声に出す~耳で聞くプロセスだけがスキップされて、音を聞くのと同じ部分の脳が言葉を認識しているような状態です)。
まとめ(ミスをしない人間はいない)
人間、誰しもミスはします。
ミスをしない人間など、一人もいません。
本当に実力があるお子さんは、ケアレスミスをしそうになったときに自分でそのことに気付き、それをテスト時間内に自ら修正しています。
どうして気付きやすいかと言えば、自分のよく陥るミスを自覚し、そうなりそうだったら殊更注意し、またはそうならないように予防的に対策を講じることを、普段の学習で身につけているから、です。
ケアレスミスの敵は、自分自身です。
自分の弱点に向き合い、強い意志をもって、ミスを減らす努力をするようにしてください。