暗記力アップはカンタン! 誰にでもできる実践方法とは

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ウチの子は暗記が苦手で。。。と嘆く親御さんのお話しを、よく耳にします。

確かに、「うん、覚えた!」と口で言っても、後で書けない、言えないお子さんは多いですね。
反対に、覚えたことを思い出して引き出せることのできる、暗記に強いお子さんもいます。
この違いは、どこからうまれるのでしょうか。

 

4回連続で記憶力日本選手権チャンピオンの池田義博さんは、「記憶力には、能力の差がほとんどありません」とおっしゃっています。
つまり、誰でも工夫次第で記憶力はアップできる、ということです。

「暗記」のメカニズムを理解して、暗記の悩みから解放されましょう!

 

はじめに

先ずはじめに断っておきますが、受験で問われる力の大部分は「考える力」です。
つまり、単純な記憶だけで得点できるのは、数割程度だと思ってください。 

だからもし「暗記して何になるのだろう?」と疑問を口にするお子さんがいたら、それは、褒めるべき慧眼(けいがん)ですね。
勉強の重点を暗記に置くことは決して得策ではないし、特に算数など、理屈(論理)を十分理解しないで解き方を覚えるのは、弊害の方がずっと大きいです。
つまり、思考力を鍛えることは、受験勉強の本道と言っていいでしょう。

しかしそうは言っても、暗記力がある方が中学受験に有利なことは確かですし、覚えないと始まらないことが多いのも、これまた事実です。

先の、暗記に疑問を抱くお子さんに答えるとするなら、「暗記それ自体の意味は薄いが、深く考察したり深い概念を伝えたりするために役立つ」と言ったところでしょうか。
要は、簡単な事実は暗記でショートカットし、重要な思考に脳を使う、ということです。

思考力というものは、一朝一夕に身に着くものではありません。
つまり、「今日から考える習慣をつけて1ヶ月後には結果が出る」などということは少なく、3ヶ月、あるいは半年単位で、徐々に成果があらわれるような力、それが思考力です。

 一方暗記力は、工夫と実践しだいで、比較的短時間で結果につながります
テストの点があがり、「やればできる!」という手応えをつかむことは、お子さんにとっても大きなモチベーションアップもなります。

上手に暗記力を伸ばして欲しいと思います。

 

暗記力とは複合能力だ

 暗記力は「記憶する力」と思われているかもしれませんが、まず前提として、ただ単に記憶するだけではないことをシッカリ理解しましょう。
つまり「暗記力」とは、次の3要素に因数分解できる複合的な能力だと思ってください。

  • まず覚えて
  • それを後で思い出し
  • 書いたり話したりできる

これら3拍子が揃ってはじめて、「暗記力がある」ということになります。

あたりまえですね。覚えていても使えなければ、何の役にも立ちません。
暗記が得意なお子さんは、脳に強く記憶させたり、こまめに思い出したり、見返すことを実践しています。
意識的に努めている場合もあれば、無意識でそれをしているお子さんもいるのです。

 

そもそも人は忘れる生き物

そもそも、脳は物事をなるべく覚えないようになっています。
衝撃の事実!ですが、そこには防衛本能とも言うべきメカニズムが働いているのです。

脳の質量は、体全体のたった2%程度です。
ところが、脳は体全体の25%ものエネルギーを消費しています。
記憶という作業には膨大なエネルギーを使うので、見たもの聞いたもの全てを記憶していたら、脳はオーバーヒートしてしまいます。

また、いったん覚えたことも、脳は急速に忘れるようにもできています。
忘れ方というのは、時間に対して直線的な進み方ではないのです。

忘却曲線という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
記憶の定着を縦軸に、時間を横軸にプロットした、このような図ですね。

忘却曲線

出典:Wikipediaより

19世紀のドイツの心理学者、ヘルマン・エビングハウスは、「人間は覚えた直後から急速に忘れる」ことを、実験で検証しました。

ちなみに、「何かを覚えた時、1日後には67%忘れている」と言われていますが、これはハッキリ言って誤解です。正しくは、「何かを覚えた時、1日後にそれを再び覚えるのにかかる労力は最初の67%で足りる」ということです。
でもまあ、これをキチンと解釈したからといって、記憶力が上がるわけではありません(笑)。
パーセンテージの正確な数字はともかく、大切なのは「どうやって勉強に役立てるか」ということです。

つまり、「人間は忘れる生き物なので、記憶を定着させるためには、タイミングよく復習をすることがものすごく大事だ」ということを理解しましょう。

  

「覚える力」を高める工夫

まず覚えなければ、その後引き出すこともできません。いろはのい、です。
ポイントは、五感をフル活用するということ。

人間の脳は、複数の感覚を動員した時に記憶しやすいように出来ています。
ただ見ているだけ=視覚のみでは、記憶に残りにくいです。

繰り返し書く

書くことは、視覚と触覚に訴えるので、ただ目で追っているだけより記憶に残りやすいです。
国語の漢字、社会の人名や地名などは、「覚えるぞ!」という意志のもと、何度も繰り返し書きましょう。
実際のテストも、選択問題でなければ「書く」必要があります。正しく書けなければ、点数になりません。
間違えたまま繰り返し書くことがないよう、確認しながら書きましょう。

空中に指で文字を書く「空書」もおすすめの方法です。
ノートに書いていると、手段(書く作業)が目的化してしまい、頭に入ってこない恐れがあります。
それを防ぐためにも空中で思い出しながら指で書いて脳内を活性化してください。 

繰り返し声に出す

耳から入った情報が、強く印象に残る場合ってありますよね。
TVのCMなどはその典型ですし、曲の歌詞は直ぐ覚えるものです。

ましてや、自分で音読するということになれば、目で見て、口を動かし、耳で聞く、同時にいくつもの感覚が動員され、効果は絶大です。
電話番号も、掛け算九九も、声に出して覚えたことがあると思います。

また音読のいいところは、体を動かしながらでもできることです。
つまり、休憩をとりながら暗記もできる、ということ。一石二鳥です。

今や簡単にスマホなどに録音できますから、散歩しながら繰り返し聞いたりすれば、簡単に覚えられるでしょう。 

部屋に付箋を貼る

毎日見ている物は、覚える気がなくても覚えてしまいます。
一度だけボーっと眺めたものは簡単に忘れますが、毎日頻繁に見ていると、脳は勝手に「重要だ」と認識するため、記憶に残ります。
暗記したいことを付箋に書いたり表にまとめたりして、自宅内の目につくところに貼っておきましょう。

覚えにくいことほど複数の箇所に貼る、特に覚えたいことは付箋の色を変える、強調したいことは文字の色や字体を変えるなど、記憶に残りやすくなるよう工夫できると、楽しく覚えられるでしょう。 

何かと結びつける

特殊な状況下の記憶は、脳の中に残りやすくなります。
辛かった記憶や、すごく楽しかった!経験が忘れられないように、印象深かったことは記憶に残ります。
これを利用しましょう。言うなれば、「印象づけ作戦」です。 

自分の身近なことと結びつける

例えば、15人の徳川将軍を順に暗記するような場合、家の中にあるものを玄関から順に1〜15まで番号をつけ、番号と覚えたいアイテムを紐付け、連想するものを強引に映像化する、というような方法です。

1.ベッド→家康、2.カレンダー→秀忠、3.時計→家光、4.机→家綱、5.本棚→綱吉...としますね。

  • ベッドに鉄アレイがのっている(家「康」は健康のイメージ)
  • カレンダーの写真は忠犬ハチ公(秀「忠」から忠犬ハチ公)
  • 時計は光り輝いている(家「光」)など。

テストの時には、場所を順番に辿り、鉄アレイ、忠犬ハチ公、光る時計の絵が思い出され、家康、秀忠、家光と記憶を思い出せます。実は、そんなものがあるはずがないような突飛な発想で(こじつけで)イメージすると、「面白い」「バカバカしい」などの感情が働いて、より記憶が強くなります。 

イラストと結びつける

絵を描くのが好きなら、覚えたい物のイラストを描いてしまいましょう。

視覚情報としても、文字よりも絵やグラフの方が脳に残りやすいですし、自分で手を動かして描けば、手の感覚も動員することになります。 

音楽・リズムと結びつける

音楽好きなら、替え歌や作曲をしてしまいましょう。リズムに合わせてラップ調に歌うのもありです。

歴史の年号などの「語呂合わせ」も、リズムのよいものが多いですよね。 

環境を変える

環境を変えて暗記に臨むと、記憶に残りやすくなる、ということが知られています。図書館で勉強したり、友達と一緒に暗記したりという経験は、誰しもあると思います。
その応用で、歩きながらの暗記もいいです。書を捨てよ町へ出よう!ですね。

歩きながら暗記のいいところは、環境が変わる以外にもあるのです。

歩くと、血行がよくなることで脳の機能が高まり、かつ、シータ波という脳波が出て記憶しやすい状態になることが、最近の研究からわかってきました。
ですから先の、「自分で録音した音声を聞きながら散歩」というのは、暗記のためには理にかなった行動です。
モノを読みながら歩くのは危険ですので、是非音声で試してください。

 

復習あるのみ!

覚えたつもりでも、「思い出せない、書けない」のでは意味がありません。
記憶の定着にも、効果的に引き出せるようにするためにも、復習することが大事です。

また、復習をするともう一ついいことがあるのです。
それは、記憶が短期記憶から長期記憶へと移行していくということです。

試験前の一夜漬けで詰め込んだ知識(短期記憶)は、定着せずに(長期記憶になることなく)、いずれサッパリ忘れてしまっているという経験は、誰しもあることでしょう。

「記憶を定着させるためには、タイミングよく復習をすることがものすごく大事」と書きました。
では、復習に最適なタイミングとは、どういうことでしょうか。

先の忘却曲線でも明らかなとおり、反復的に復習をすると、復習に必要な時間が短くなっていきます。つまり、

  • 一度勉強をした後、早い段階で復習をすると頭に残りやすい
  • 何度も復習を重ねるうちに長期記憶に移行するので忘れないようになる

ということです。

よく親御さんに「塾のある日は夜遅くなるのですが、帰宅後勉強した方がいいですか?」と訊かれます。
私は「ほんの少しの時間でもいいので、その日のうちに必ず復習してください」と答えます。
極端に言うと、その日のノートやテキストをパラパラとめくり、「今日何やったっけ」と5分だけ思い出すのでも、その後の記憶の定着にとても有効なのです。

ところで、面白い実験があります。

「8つの新しい曲をピアノで弾く」という課題を、2つのグループに課しました。
総練習時間は同じです。
グループAは集中学習:つまり「1曲ずつ確実にマスターする」方法、
グループBは分散学習:つまり「ランダムに各曲を練習する」という方法で練習しました。

その結果、より多くの曲を正確に覚えられたのは、グループBでした。
この実験は、集中学習よりも分散学習の方が記憶に関してパフォーマンスが高いことを示しています。

なぜ、分散学習のほうがよく覚えられるのか、そのメカニズムはハッキリとは解明されていませんが、一度勉強してから間を空けると、その間に覚えたことが脳内で整理されると考えられています。
全体を俯瞰した状態で復習すると、脳が記憶の怪しい部分を補完するように働き、その結果、記憶が定着しやすい、ということのようです。

この方法は、試験の出題範囲が決まっているときに、特に効果を発揮します。

1回目はざっと、とりあえず範囲の最後まで終わらせます。コツはスピードを維持すること。
速くざっと終わらせる勉強を数回繰り返せば、長期間残る記憶になるのです。
この方法だと、一つひとつ集中して取り組むより、記憶にかかるトータルの時間が少なくて済みます。

イメージとしては、「薄い記憶を塗り重ねて厚くする感じ」です。

また、2回目の復習はもう少し間をあけて、3回目は更に間をあけて、というのがいいということもわかっています。
つまり、忘れかけているタイミングで復習すると記憶定着に効果的、ということです。

ところで、何度も復習すべし!ということですが、その復習も効率的にしたいものです。
そこで役立つのが、「まとめノート」です。

特に、自分の間違えた問題や苦手な分野をまとめたりしたものは、自分専用の「苦手ノート」になります。
これを作りさえすれば、テスト前にすばやく見直すことができます。
もちろん、作りっぱなしは駄目です。
まとめノートを作ったら、それを使ってしっかりと復習しましょう。

 

アウトプットを意識しよう!

インプットした記憶を定着させるために理想的なのは、アウトプットすることです。
つまり、覚えた情報を人に説明することなどが、とても有効です。

「授業内容を半年後にどれだけ覚えているか」を、学習スタイル別で比較した、アメリカの調査があります。
ただ講義を聞く(インプット)だけでは僅か5%の定着率であるのに対し、他の人に教えること(アウトプット)を実践した場合は95%を覚えていたのだそうです。

人に教えるのがイチバン勉強になるよ、ということを、よく聞くと思います。
テスト前の休み時間、わからないところを皆が聞きに来る優等生は、何も奉仕で教えているのではなくて(もちろんそういうこともあるのかもしれませんが)、「皆に教えることで、より覚えられる」ということが解っているのです。
お子さんが暗記したことを、親御さんが訊いてあげる。これだけで、強く記憶に残ります。

ただ、いつも友達や家族に聞いてもらえるわけではないでしょう。

相手がいなくてもできるのが、覚えた内容を実際に書き出してみる「アウトプットライティング」です。
人の脳は「締め切り効果」といって、時間の制限がかかると、通常よりも集中力を高める働きがあります。
この働きを利用し、例えば1分間などと区切って、今日勉強した範囲を再現して書き出してみましょう。
また、「自分が先生になったつもりで架空の友達に教える」という方法を、実践してもいいでしょう。

ある心理学者によると、最も記憶定着のよいインプットとアウトプットの黄金比率は、何と「3:7」だそうです。
つまり、参考書を読むなど30分間インプットしたら、人に教えたり問題集を解いたりという復習を70分間アウトプットしなさい、という意味です。
これは、算数などでは実践できても、理科や社会ではなかなか難しい時間配分ですよね。

まあここまで極端でないにしても大切なのは、アウトプットに多めに時間を費やすことを前提に勉強計画を立てろ、ということです。
「3:7」という黄金比を念頭に置き、復習までを見通したうえで勉強を進めれば、より効率よく覚えることができると思います。

 

暗記力アップに役立つ生活習慣とは?

睡眠や食事などの基本的な生活習慣も、暗記力と関係があります。 

睡眠は、脳が活発に働いている「レム睡眠」と、脳や肉体の疲労回復のために休息するノンレム睡眠に分かれることは、広く知られています。
実はレム睡眠の時間帯、人間の脳は、その日に起こったことがらの「記憶の整理」をしています。

脳は、睡眠の直前に覚えた知識を「重要」と判断しやすい(=記憶されやすい)ので、就寝前の勉強は「暗記」一択です。
短くてもいいので、「寝る直前の暗記」を習慣化するといいでしょう。

脳はほとんど水分でできているので、水分量の変化に敏感です。
これは暗記に限らないのですが、特に脳を使う勉強中はこまめな水分補給が大切です。
カフェインは、摂りすぎると「不安感の増大」や「短期記憶の低下」をもたらします。
糖分の入った飲み物は、血糖値を急激に上昇させ、一時的に脳を活性化させますが、その後血糖値は急降下し、集中力が低下し頭がボーッとなります。
勉強中は、水やノンカフェインのお茶(麦茶など)で、水分を摂りましょう。

暗記力を高める食べ物、というものもあります。
青魚(サンマ、サバ、イワシ、ブリなど)、大豆製品(納豆、豆腐など)、卵、米、チョコレート、ココア、ナッツ類など。
栄養バランスのとれた規則正しい食生活は大前提ですが、これらの食品を少し意識的に摂ることも、考えてもいいと思います。

適度に体を動かすことも、暗記力を高めるために有効です。
10分間の運動後の方が、記憶力が向上するという実験結果があります。
日頃体を動かす習慣が少ないお子さんは、リフレッシュと共に、暗記力アップのために「軽い運動」を習慣化してもいいですね。

集中力の持続についても、意識したいところです。
脳科学的に、人間が深い集中力を保てるのは15分と言われています。
ダラダラ暗記していても、時間ばかりかかり、頭に入っていない場合が多い、ということです。
お子さんに合った勉強時間やメリハリのつけ方も、意識できるとよいでしょう。

最後に、最近注目されている「青ペン勉強法」についても、紹介しておきます。

青色を見ると、人間の脳には、自立神経を安定させるセロトニンという神経伝達物質が分泌されます。
このセロトニンは「幸せホルモン」とも言われ、ポジティブな考え方になった時や、ストレスない状態の時に分泌される脳内物質で、心を落ち着かせる鎮静効果と、集中力を高める効果があります。
集中力を高め、落ち着いて勉強できる青ペンを使った暗記方法は、脳科学的にも最適というわけです。

私の仲間で、大学受験に際し、英単語をビッシリ青のボールペンでノートに書きつけている男がいました。
今から考えると、彼も、記憶に対して理にかなった行動をしていたのだと解ります。

 

お子さんに合った暗記法を

大事なことなのでもう一度書きますが、誰でも工夫次第で記憶力は上げられます。

ココに挙げたことの中でも、睡眠前のタイミングがいいとか、反復が不可欠だとか、分散学習が効くとかいうことは、どのお子さんにも共通に当てはまるので、素直に実践してみてください。

注意が必要なのは、「覚え方」です。
覚え方には人それぞれに合った方法があるので、ココに挙げたことをヒントに、いろいろ試してみてください。

例えば、視覚が優位なお子さんは繰り返し書くのがいいでしょうし、聴覚が優位なお子さんは繰り返し声に出すことが合っていると思います。

お子さんと親御さんの、暗記に関する悩みが解消されることを、願ってやみません。

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