イスタンブールの夜、世紀の逆転劇に世界は酔いしれた

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AC Milan 3-3(a.e.t) Liverpool

2005シーズンのファイナル、UEFAチャンピオンズリーグ決勝は、イスタンブールの奇跡として後世に伝えられる世紀の逆転劇となりました。

下馬評はミランの圧倒的有利

リバプールは、就任初年度のベニテス監督の下、プレミアでも苦しんでいました。
シャビ・アロンソキューウェルシュミツェルといった主力にけが人が続出し、14敗を喫してしまいます。
終わってみれば、優勝したチェルシーに27ポイントもの差をつけられ、5位に沈みました。周囲の期待を完全に裏切った、ポンコツチームでした。

一方ミランは、バランスの取れたチームでした。
マルディーニネスタが堅陣を敷く最終ライン、ピルロガットゥーゾが抜群の補完を見せる中盤、そしてアンチェロッティ監督が求める守備的タスクをこなすカカシェフチェンコクレスポの前線。
セリエAは2位に終わりましたが、チームとしての熟成は、リバプールとは比較にならないほどで、主力を温存しながらこの決勝を迎えるなど準備も万全を期し、下馬評は当然ながらミラン有利でした。

 

一方的にミランが支配した前半

先制したのはミランでした。

試合開始1分。早速、マルディーニがFKからネットを揺らします。
気が早いけれど、私はその時点で、「大変な試合になるかも」と予感しました。

ミランが中盤を圧倒的に制圧し、リバプール守備陣がいつ崩れてもおかしくない雰囲気で、前半は推移します。

前半終盤、予想どおり、怒涛のゴールラッシュがスタートします。

前半39分、右へ流れたシェフチェンコからのセンタリングを、クレスポが絶妙の「消える動き」で押し込みます。
追加点を得て、更にミランがたたみかけます。

1分後にはカカの超ロング・スルーパスにクレスポが抜け出し、GKの脇を抜く冷静なシュートを決めます。

あっという間の3点。
3-0でハーフタイム
この時点で、勝負は決まったと、誰しも思っていました。

サッカーの試合で3点差は、屈辱的な大差、という感じです。
3-0のスコアは、後から振り返っても「実力差はあったよなぁ」という評価になってしまう、そういう試合です。
しかもこれがまだ前半。あと45分あるのです。
リバプールは、あと何点喰らってしまうのか? そういう感じでした。

ましてや、対戦相手のミランは、数多くのタイトルを手中に収めた名門で、こういう大舞台の戦い方を熟知しています。
リバプールには、万に一つも、つけ入る隙などないだろうな、と思われました。。。

そして奇跡の6分間

このままミランのペースでズルズルと大味な試合になってしまうのか?と思った後半、リバプールは、キッチリ中盤を修正してきました。

ベニテス監督は、右SBのフィナンに代えてMFハマンを投入し、フォーメーションを4-5-1から3-4-2-1に変更しました。その結果、ジェラードと前線の距離感がよくなり、攻守においてキャプテンのプレゼンスがグンと上がります。

攻守のバランスが改善し、ポゼッションできるようになったリバプールのミッドフィールドがゲームを支配し始めます。
サイドからの速いセンタリングを効果的に繰り出すと、対応できないミランDF陣に綻びが見え始めました。

試合の主導権を完全に取り戻したリバプールは、後半9分、ジェラードが左からのクロスをヘッドで右サイドネットに叩き込みます。
鳴りを潜めていたリバプールファンが、俄然色めきたちます。

ここからリバプールの、猛烈な反撃、後に伝えられる6分間が始まります。

後半11分には、途中出場のシュミツェルがボックス外から強烈なミドルを左サイドネットに突き刺し追加点。

サポーターが歌うYou'll Never Walk Aloneの大合唱を背に、リバプールは押せ押せです。

後半15分には、一度はジーダに弾かれながらもシャビ・アロンソがPKを決め、わずか6分の間に試合を振り出しに戻しました。
何という集中力でしょう。

同点のその後

3-3で、その後延長まで推移したのは、この戦いのレベルの高さを物語っています。

下手にリスクを負って攻め過ぎると、鋭いカウンターの餌食になることを、お互いに解っているのです。
スコアレスでここまで来たのではない。
現に、相手の鋭さは身をもって体験しているのです。

追加点こそありませんが、「一瞬でも気を許すとやられる」我慢比べと、相手に自由にやらせまいとする凄まじい集中力の、とてもハイレベルの戦いでした。

PKの結果は結果であって、それ自体にサッカー的な意味合いはありません。
勝負としては、両者優勝にできないから仕方なくやっている訳で、くじやじゃんけんで決めるよりはマシでしょ、ぐらいの意味合いしかないのです。

それにしても、何という結末でしょう。

結局、下馬評でもダメダメで、前半はコテンパンにやられていたリバプールが、後半6分間に3点差を同点に追いつき、PK戦でも勝ってしまうなんて。

「勝利の女神」の気紛れとはよく言いますが、ここまで残酷だとは!
サッカーって、何て恐ろしくも美しいんだろう。

 

説明がつかない「6分間」

ミランのキャプテン、マルディーニの談話

われわれは試合の大半をコントロールし、うまく闘っていた。

ミランのディフェンダー、ネスタの談話

後半開始直後に、何が起きたのか。
説明のしようがない。

ミランの監督、アンチェロッティの談話

あの6分間は一生、忘れない。
忘れられるはずがない。

我々は、6分間の精神錯乱に陥ってしまった。
その後は120分までプレーを続けて、耐え抜いたことを考えると、あの6分間は全く説明がつかない。
とても残念だし、悔しく思うが、これがサッカーだ。

もうね。
解説するなどという野暮を、したくないです。

機会があれば、是非、ご自身の目でご覧になってください。

 

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