易化傾向でも問われる応用思考(中学入試問題分析・2021理科編)

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化学

2021年中学入試の分析を依頼され、寄稿した文章を、一部改編して掲載します。

 

易化傾向は今年も続く

理科の入試問題は、ここ数年易化してきましたが今年も踏襲された感があります。
昨年より難しくなった、という学校は、ほとんどありませんでした。
もちろん今年は、学習範囲を履修し切れなかったことへの配慮から、出題範囲を限定した学校もありましたが、易化がコロナ禍による一時的な傾向という訳ではなく、来年以降も踏襲されそうです。

しかし一方で、中堅から難関校においては、知識に照らして即答できるような問題は、それほど多く出題される訳ではありません。

むしろ数多く出題されるのは、グラフ・表などから読み解いたデータを速く正確に処理させたり、問題文の中からヒントを抽出し必要に応じてその場で法則を導いたり、というような応用的問題です。
つまり、「易しい」というのは「重箱の隅をつつくような知識は必要ない」という意味であり、「なぜそうなるのか」という「因果関係をしっかり把握しなければ解けない問題が多い」と思った方がいい、ということです。

 

対策

志望校対策講座や過去問演習などは最後の手段

こうした問題を解くためには、塾の主催する志望校別対策講座や、過去問演習が有効です。

但し、6年生になってこういった対策をするだけでいいのか? というと、決してそうではありません。
最終的にはこういった対策も有効ですが、それは「見たこともないような問題に本番で直面しても慌てない練習」程度と思った方がいいと思います。

であれば、受験生としては、どう対策するべきでしょうか。

対策は低学年から

日頃から、様々な現象に興味・関心を持ち、自分のあたまでいろいろ考えること
遠回りのようでも、それに尽きると思います。
そしてその習慣は、低学年の頃から、できれば小学校入学前から、つけて欲しいです。
6年生になって慌てても、遅いかもしれません。

季節毎の、植物の息吹を感じること。
動物や昆虫、夜空の星々を観察すること。
そういった自然に触れたり、科学読み物にふけるようなことはとても大事ですが、ご家庭でやれることも、実はずいぶん多いのです。

身のまわりの現象は科学のネタに溢れている

例えばキッチンは、化学反応に溢れています。
料理を手伝ってもらうことでも、重曹で掃除してもらうことでも、化学を身近に感じるチャンスになるかも知れません。

また、テレビや新聞のニュースも、考えを深めるキッカケの宝庫です。
気象や宇宙などの自然現象についてもそうですし、原子力発電やウィルスといった時事的話題であっても、これらを科学的に捉えるとどうなるのかという観点で、是非話をしてみてください。

その場で親御さんが答えられなくても、構わないのです。
大事なのは、お子さん自身が、色々なことに疑問を持ち、自ら考える習慣をつけ、理科的理解力の基礎能力=足腰を鍛えることです。
そう、スパーリングパートナー(壁打ち相手とも言いますね)と思っていただければいいのです。

「もし○○だったら、どうなると思う?」というような日常的な問いかけによって、お子さんは、世の中に関心を持ち、様々なことを考える習慣を身につけるでしょう。

塾も、ただ「教えてもらう」だけではもったいないと思います。
貪欲に、積極的に、「知識を奪いにいく」よう、ちょっとだけ考え方・姿勢を変えてみては如何でしょうか。

例えば、いかにも無駄に思える先生の「脱線話」にこそ、理科的理解を深めるヒントがたくさん隠されています。
単なる知識の吸収を超えて、様々な応用思考を身につけるチャンスだと思い、食らいついて質問責めにしてしまいましょう。

知識を吸収する時に、「なぜそうなのか」という納得とともに理解しないと、そもそも覚えるのに苦労しますし、少しひねった問題に対処できません。
学習の中で少しでも疑問に思ったことは、自ら調べ、自ら考える習慣を持ちたいものです。

図鑑や事典などで調べたり、スマホやタブレットを使うのもいいでしょう。
ネットが発達した現代、世界中の図書館が手の中にあるようなものですし、簡単な実験映像だって検索することができます。
こんな便利なツールを、利用しない手はありません。

「どうしてだろうね、調べてごらん」と促すのも、とてもいいと思います。

 

理科の本質は、帰納と演繹の自在な思考

そもそも、理科という教科の本質は、事象観察から法則を抽出し、その法則をまた別の事象に当てはめる、ということの繰り返しです。

具体事象の観察から普遍法則を抽出するのに有効なのは、ニュートンの逸話で例えると、リンゴの落下を見て「万有引力の法則」を導き出す帰納思考です。
反対に、法則を応用するということは、例えば、万有引力の法則が成り立つなら太陽の周りを回る「地球の公転」も説明できる、と考える演繹思考です。

つまり、具体事象を帰納し抽象化すること、抽象概念を演繹し具体化すること、この2つの思考を使いこなすのが自然科学であり、人類が科学を進歩させてきた原動力は、この2つの思考方法にあった、ということです。

理科の入試問題の出題者が、帰納と演繹、両方の「応用的思考」素質をみたいと考えているならば、知識の暗記学習ではまったく太刀打ちできない、とおわかりいただけると思います。

中堅以上の学校に挑むには、単なる知識に加え、磨き上げた「考える習慣」を総動員し、場合によっては試行錯誤の上、粘り強く問題に対峙する必要があります。
こうしたお子さんのチャレンジを、日常の生活の中で是非サポートしてあげて欲しいと思います。

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