本番に強い人になろう!~知られていない「緊張するメカニズム」
大人でも、「本番に弱い人」というのは居ます。
子どもであればなおさらで、本番に強いことの方が稀ですよね。
しかしながら、本番に強い子どもも、確かにいる訳です。
そんなお子さんは、他のお子さんと、何かが違うハズです。
「本番に弱い」我が子を、「本番に強いタイプ」へと変貌させることができたら、どんなにいいだろうか!
そう思っている親御さんも、いっぱいいらっしゃることでしょう。
もちろんYES!
是非お子さんを、実力が発揮できる「本番に強いタイプ」に変貌させてあげてください!
Table of Contents
アガるメカニズムを知ろう
アガる、緊張する、頭が真っ白になる。。。
こういうことが起きる「原因」について、先ず見ていきましょう。
本番に弱いタイプのお子さんには、共通の特徴があります。
私の経験で言うと、大きく以下の3タイプに集約されます。
自尊心が低い
周囲からネガティブな扱いを受けてきたり、できたと言えるような体験をしてこなかったことが原因でどうせ自分なんてうまくいかないといった自己暗示をかけてしまうパターンです。
このタイプのポイントは、「成功体験がない」ことです。
失敗を過度に恐れる
難しい問題ばかりだったらどうしよう。
合格できなかったらどうしよう。
周りになんて言われるか、恥ずかしい。
過度なプレッシャーから硬直し、平常心が失われてしまうパターンです。
このタイプのポイントは、「結果に対しての執着心が強い」ことです。
踏んだ場数が少ない
本番環境に慣れていないため、周囲の雰囲気に飲まれて自分のペースが乱れてしまうパターンです。
原因がわかれば、対策はカンタン
原因がわかれば、対策はカンタンです。
原因となる「因子」を取り除いてやればいいのです。
大人とは違い、子どもは積み重ねてきた経験値が絶対的に少ないので、変なバイアスに囚われるようなことがありません。
つまり、まぁ「子どもは素直だ」ってことです。
これは非常に大きなアドバンテージです。
親御さんは、お子さんの人生観を左右する大事なキーパーソンとして、上手に「ノセて」あげてください。
「成功体験」でお子さんの自尊心を育もう
お子さんを、「自尊心が低い」現状から、「自尊心が高い」あるべき姿にするためには、成功体験を積ませてあげること。これに尽きます。
「成功体験」と言うと、とても立派なことと思うかもしれませんが、決してそうではありません。
日常の、ものすごく些細なことで構わないのです。
むしろ、あんなこともあった、こんなこともあった、という「数」の方が重要な場合が多いのです。
例えばこんなことです(このぐらいのレベルどもOKなんだ、と思ってください)。
- 漢字の小テストで満点をとった(その結果「クラス全員の前で先生が褒めてくれた」があればなお可))
- 運動会の50m走で、1番を獲った(勉強分野に限りません)
- 学芸会で立派に主役を務め、拍手喝采を浴びた
- クラスの誰よりもピアノが上手く、卒業式で伴奏を任された
などなど。
要は、お子さんの承認欲求を認めまくってください、ということです。
注意点がいくつかあります。
まず、成功体験は少なくとも「明確な結果に結びついた」体験だ、ということを意識してください。
「頑張ったけど駄目だったね」という体験は、成功体験にはなりません(この点は、次の項で説明します)。
また、張り切って「さぁこれから成功体験を積みに行くぞ!」とシャカリキになる必要は、全然ありません。
既にお子さんは、いろいろな体験を積んできているハズです。
その数限りない体験の中から、大事な体験を取り出し、「ほらこれって立派な成功体験でしょ」と追体験(意味づけ)させてあげるのが、親御さんの役割です。
そう。
成功体験は、活用しないと脳の一番奥の引き出しで眠ったままなのです。
それはいかにもモッタイナイ。
ですから親御さんは、「こういうことあったじゃない」と体験を掘り起こし、その体験に「大成功だったよね!」と金ピカのラベルを貼り、折につけその体験を思い出させてあげる、というトコロまでやってあげてください。
「質」より「量」だと書きましたが、それは「何かにつけ思い出させてあげる、その頻度が多い方がお子さんの自信になるから」です。
いつも意識する(させる)ことだけでも効果がありますが、もっと効果が高い方法があります。
それは、「成功に至る過程を自分なりのスタイルとして確立」してしまうことです。
「型」に落とし込んでしまえば、これはもう盤石です。
つまり、「あの時の漢字テストと同じように頑張れば何でもできるはずだ」というトコロまで、「成功体験への道筋をルーティン化」してしまう訳です。
そうは言っても、どこまで我が子を褒める必要があるの? と思うかもしれませんね。
それは残念ながら、親御さんが決めることではありません。お子さんが決めるのです。
目安としては、「どうせ自分なんてうまくいかない」という口癖が消えるまで、とお考え下さい。
前向きな気持ちで勉強に取り組むようになって、初めて「お子さんの自尊心が満たされた状態」になるのです。
もちろん、お子さんも好調不調の波はあるので、一旦取り戻した自尊心が揺らぐ期間も出てくるでしょう。
そうしたら、もう一度やり直しです。
お子さんより前に親御さんがネを上げてはいけません。
結果よりも過程を重視しよう(ケセラセラ)
失敗への恐れが強いのは、結果に対する執着が強いからだ、と指摘しました。
実は、中学受験の残酷な現実ですが、第一志望に合格できる受験生は全体の2~3割と言われています。
この「現実」に対し「結果重視」の心もちで臨むのは、無謀というか、歩留まりの悪すぎる勝負を挑んでいるということになります。
ということで、結果への執着を捨てましょう。
(中学受験専門の家庭教師としてあるまじき発言ですが、仕方ありません。)
少なくとも親御さんは、キッパリと結果への執着を捨てましょう。
お子さんに対し、結果を求めプレッシャーを与えるような言動は、言語道断。御法度です。
では、何に執着するかというと、「過程」や「既に獲得した習慣」です。
お子さんは、遊びたい気持ちや眠りたい気持ちをグッと我慢し、勉強を頑張ってきました。
その過程で、既に「自分で学習する習慣」という、一生モンのスキルを獲得しています。
自分の弱点を認識し、そこから目をそらさず努力を重ね、克服するといった、大人でもなかなかやりたくない地道な作業を、ずっと積み上げてきたわけです。
もう、十分に素晴らしいことじゃありませんか。
入試本番では、結果をあれこれと考えず、今まで勉強してきたことを出し切るだけでいい。
「人事を尽くして天命を待つ」の心境。
人生、まさに「ケセラセラ」です。
親御さんが留意するべきなのは、お子さんの自己肯定感を高めてあげるということです。
人間は、自己肯定感が低いと、
- ちょっとしたことでもネガティブに捉えて、心が不安定になりやすい
- 自分の短所と相手の長所を比較する(自分の短所に目がいく)ようになる
- 「どうせ」、「だって」など、ネガティブな表現が多くなる
- 自信が無いので、判断を他人に依存しやすくなる
- 「どうせ失敗するから」とチャレンジすることが苦手になり、消極的になる
というダメダメ状態に陥ります。
この「自己肯定感」は、「自尊心」とどう違うんだ? ということですが、「自分を受け入れる」トコロは同じながら、
- 「自尊心」は、能力などの根拠があって「自分を受け入れる」こと
- 「自己肯定感」は、「ありのままの自分を受け入れる」こと
という点で異なります。
つまり自己肯定感は、何の結果も根拠も必要としない、あなたがあなたであるそのことだけで十分に価値があるんだ、という心境です。
これは親御さんにとっても、「結果」を伴った「成功体験」に基づいて「自尊心」を育むより、ずっと簡単でしょう。
「あなたは、とてもよく頑張った。それだけでもう、十分に素晴らしい。」と言って抱きしめてあげるだけでいいのです。
注意点がいくつかあります。
親御さんが完璧に「結果への執着を捨て」られても、お子さんがそうでないこともあるのです。
といっても、これは特殊な例です。
通常というか、たいていの場合、親御さんが「結果への執着を捨て」ると、まるで憑き物が落ちたかのように、お子さんも、結果に執着しなくなります。
ところが、人一倍思いやりの強い優しいお子さんの場合、「親もこれだけのことをしてくれた、幼い弟妹も自分に気を遣って我慢している、塾の先生にもお世話になった、これに報いるのは『合格』という結果だ」と、かえって結果に執着するようになるケースが、稀ながらあるのです。
まあそうは言っても、親御さんがひたすらニコニコ機嫌よく「無償の愛」を注ぎ続けること以外に、お子さんの執着を解く特効薬もないのですが。
私は、自己肯定感が高い人間に育てることこそ親が子にしてやれる最大のギフトだと信じています。私自身、自己肯定感の低い子どもでしたので、余計にそう思うのかもしれませんが。
- 結果を期待しているぞ
- お前にはこれだけ投資したんだからな
- 一族みんなXX校に入学したんだからな
こういう心ない言葉は、カンタンに子どもの自己肯定感を殺してしまいます。
なぜなら、そういう自己肯定できないお子さんの魂は、「結果が伴わなければ愛されない」という飢餓感と共に休まることがなく、次は大学だ、就職だ、とずっと孤独に「結果」を求め続けることになるからです。
考えてみてください。
仮に、年収1億円稼ぐようになって「あの人は成功者だ」と言われるような存在になったとしましょう。
でも自己肯定感の乏しい当の本人は、「結果を出し続けなければ自分を認めてもらえない恐怖」から逃れることができていないのです。
これはもう地獄です。そんな状況は「しあわせ」から程遠いのではありませんか?
我が子の幸せを願うなら、意中の中学に入学「させる」という目先の目標ではなく、自分らしい生き方を見つけられるような自己肯定感を育んであげることだと、私は思います。
どうしても結果にこだわってしまう、という場合には、心理学でいうメタアウトカムというテクニックを使うと、実現しやすくなります。
よく、「次の五輪は自分の競技人生の集大成」とか言っているアスリートがいますが、あれは自分が自分に緊張度を上げてプレッシャーをかけているので、あまりよくありません。
反対に、表彰台に自分が立って国歌を聞いているイメージを強く持つことによって、競技自体の緊張から目をそらしたり、ゴールを120m先にあると思い込むことによって100mのパフォーマンスが上がったりします。
つまり入試に照らして言うと、
- 目標を「志望校合格」ではなく「その先の楽しい学校生活」と置くと、入試が「目標」から「経過点」に格下げになり、心理的重要度が下がる
- また、目標達成した自分を何度もイメージとして体験すると、脳が「目標達成した自分」に慣れ、「できて当然」の境地に至り、リラックスする
ということです。
これは小手先のテクニックであり、抜本的な解決にはならないのですが、効果はありますので、どうしようもない時には使ってみてください。
何度もリハーサルを重ねれば、自然と緊張しなくなる
受験というイベントは、究極のアウェイ戦です。
普段慣れ親しんだ自分の机で受験する受験生は、一人もいません。
大きい教室に、沢山の受験生が集められ、一斉に鉛筆を動かして、カリカリと問題を解いている。。。
通常とはかけ離れた異様な状況の中で、集中を保つ必要があるのです。
また、12歳の少年少女にとって、入試ほど高い舞台(ステージ)に立つことは、それまでの人生でそうはなかったハズです。
舞台(ステージ)の前には死ぬほどリハーサルをするのと同様、入試(公式戦)の前には練習試合を組むのが普通ですよね。
同じような環境(場所・時間・人)での経験が少なければ、人間は緊張するのが当たり前です。
だから、疑似環境を出来るだけ多く経験することが重要です。
例えば、
- SAPIXオープン・合不合判定テスト・合格判定テストなど、(アウェイ戦を意識して)所属していない塾の公開模試を、片っ端から受ける
- 模試はできるだけ早めに申込み、自分の志望校を模試の会場に指定し、本番と似た状況を味わっておく
- 過去問を解く際に、試験開始/終了時刻、科目の順番、筆記用具、時計など、できるだけ本番と同じ条件に揃えてやってみる
- 先受けなどを利用し、本命校よりも前に滑り止め校を受験する
- 入試当日と同じ時刻、同じ方法でその学校まで足を運んでみる
- 午前午後で連続受験する日をシミュレーションする場合は、移動手段やお弁当を食べる場所も確認しておく(もちろんお弁当も本番と同じおかずで作ってもらって、実際に食べる)
など、やれることは全てやっておきましょう。
たいていのお子さんは、場数を踏むだけで、ずいぶん緊張しなくなるものです。
究極の自己暗示、アンカリング
自己暗示は眉唾に思えるかもしれませんが、心理学でも確立されたメソッドなので、どうしようもない場合は試してみてください。
アンカリングとは「条件付け」の事で、誰でもご存知の
- 条件反射(ある音を聞かせながら餌を与えられた犬は、その音を聞いただけで唾液を出すようになった「パブロフの犬」実験)
- 当時流行っていた曲を聴くと、その曲が流行っていた当時が思い出され「あぁ~、懐かしい」と感じる
などをイメージしてもらうとわかりやすいのですが、ある条件の下で、好ましい状態を瞬時に作り出すことです。
一瞬でパワフルな状態を作り出す「発火装置」の作り方
- 緊張せずに高いパフォーマンスが出せた時など、好ましい状態を一つ選びます
- そのときの状況をありありと思い出してなりきり、五感を総動員して、当時の自分自身を味わいます
- 十分に強い感情がでてきたら、最も強い感情を感じるピークの直前あたりで何度か(5~6回ほど)アンカリング(同じ場所に同じ圧力で触れたり)します
注:このアンカリング(引き金)は、視覚・聴覚・身体感覚・嗅覚・味覚すべてOKなのですが、試験会場で一番いいのはどこかに触る、何かに触ることですね - ここでいったん意識を「今」「ここに」戻します(要は一旦「素」に戻ることで、これをブレイクステートと言います)
- アンカリングした場所を先ほどと同じ圧力で繰り返し触り、アンカーが発火したら(強い感情を感じたら)、アンカリング完了です。
例えば、「左手の親指の爪を右手の親指と人差し指で押さえる」ことでアンカリングしたとします。
試験食前、緊張がすごく高まってパフォーマンスが出ない、と感じたらそれをやってみると、アンカーが発火し、リラックスして自信に溢れパフォーマンスが出せる自分にたちどころに移行できる、ということです。
自己暗示は、決していかがわしい方法ではない
私が中学を受験した時、応用自在という参考書に、「濡れタオル」のエピソードが載っていたのを思い出しました。
僕は試験会場で、緊張のあまり全く集中できませんでした。
問題を見て「一つもわからない!」とパニックを起こし、思わず泣きそうになりました。その時、お母さんに持たせてもらった「濡れタオル」を思い出しました。
それをカバンから出して顔をごしごし擦ったら、何だか頭がスッキリしました。もう一度問題をよく見てみると、前に解いた問題と同じやり方気で解けるのがわかりました。
一問解けたら気が楽になり、リラックスして残りの問題にも集中できました。結局僕は、おまじないをかけた「濡れタオル」のおかげで、第一志望校に合格できたのです。
お母さんが、「緊張したらこのタオルで顔を拭くのよ」と暗示をかけてくれたんですね。
当時の受験生は、みんな「濡れタオル」をお守りにして試験に臨んだものです。
アガらないための、心構えやテクニックを、いくつかご紹介しました。
是非、「本番に強い人」になるよう、お子さんの状況に合わせて活用してみてください。
また、いくつかのテクニックについては、NLP心理学を参考にしています。
もし興味があれば、あわせてこの記事も読んでみてください。